設計趣旨

大小の岩、様々な木々が溶け合う自然がこの地にはある。
この場所で時間が巡るごとに、自然はその姿を大きく変え、生命の力強さを感じさせる。
我々はこれらの自然と空間が溶け合わせることで、固有の経験を生み出す。
ここに共存する自然は、空間の中でその形を変え、光や影、温度、風の流れを通じて訪れる人々に働きかける存在である。
窓を通して柔らかな光が差し込み、陰影が揺れるたびに、外の自然が室内にも息づき、訪れた者を包み込む。
ここに身を置いた人は、季節の移ろいや自然の鼓動を全身で感じながら、特別な時間と空間に浸ることができる。

空間へと導く変化する内装

滞在者を出迎える廊下(路)には自然石を置き、水盤に見立てたエポキシ樹脂で固めた床を用いている。そこからリビングの名栗加工された無垢の床へと続き、さらに水風呂の本物の水盤へと続いていく。同時に、内装の変化とともに自然光による内装の陰影が揺らぐことで、空間の奥へと導く。

五感を刺激する素材

素材は、自然由来の素材の質感が伝わる仕上げとしている。様々な素材を配すことで、空間に多様な質感と重厚さを与えられるよう設えた。
石や木の凹凸が手足に自然の感触を与え、床や壁、家具に触れるたびに滞在者がより深い感覚体験を得られる。

溶け込み、変化する外装

外装には、杉板貼りや杉格子貼り、コンクリート打ち放し(杉板型枠)、リン酸処理の黒川鉄を用いている。外装の色合いを統一させることで、建物全体が自然の景観に溶け込むようにデザインした。さらに経年変化によって味わい深い表情を見せることで、自然と時間の移ろいを反映する役割も持つ。
これらの素材選択は、自然と建物が一体となり、時間とともに変わりゆく美しさを提供する建築を生み出している。

連続する内外装

内外に連続させるように壁の素材を採用し、滞在者が空間が内外に渡りつながっていることを感じ取ることができるようにした。また、岩肌を内部の壁のように扱い、滞在者を自然へと導く空間の意図を強化している。視覚的にも外部とのつながりを感じさせるような素材を配置し、窓から見える自然の表情とのつながりを想像できるようにした。

構造計画

外観から想像される独立したボリュームに反し、内部空間は連続体であることを感じ取れるよう、構造は空間に柱型が現れない壁式RC 造とした。
構造耐震要素の少なさと偏在による偏心と応力集中を防ぐため、耐力壁を建物全体でバランスよく配置をしている。
2 階の寝室からの眺望を確保するため、開口を大きく取っている。そのため寄棟屋根形状を折半構造として用い、垂れ壁を屋根によって吊る構造としている。
リビング部はとくに階高が高く、壁式の規定の3.5mを超えるため、構造計算はルート3 としている。増分解析により、保有水平耐力が必要水平耐力を超えていることを確認している。

その他

概要

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設計:アトリエ ユルリ / 株式会社 パターソン /白鳥大地
延べ床面積:247.32㎡
構造:鉄筋コンクリート構造一部鉄骨造

ABOUT ME
Haruka Chiba
一級建築士 仙台・宮城を中心に住宅の新築・リノベーションの設計をしています。 Blogにて設計以外の日々の暮らし、仙台についての情報発信をしています。